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2005/10/31 (Mon) 『ART-SCHOOL/PARADISE LOST』('05)

PARADISE LOST PARADISE LOST
ART-SCHOOL (2005/10/19)
ポニーキャニオン
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…何か、非常に距離を感じた。最初に聴いた時。
作者、そしてその作品世界と、それを聴く自分自身との距離の取り方は、当然だけど、様々な形がある。偶像としてその作者+作品世界に触れる事もあるだろうし、自分自身を重ね合わせたり投影する場合もある。また、作者と作品世界を別のものとして捉える場合もあると思う。
この作品を聴いて思ったのは、僕がアートスクールに求め、求める通りに捉えていたアートスクール像とは、この作品でのアートスクールは違うものだという事。いや、変わりつつある事は感じてはいたのだけど、このアルバムによってはっきりとそのルールがもう通じない事に気付かされた。今までは正直、その作品世界と自分自身をダブらせて捉えているところがあった。しかし、今作ではもう全くそれができない…。

“フィオナ・アップルが鳴り響く地下鉄に/二十一歳の彼女は身を投げる”というこの一行だけで、何かがはっきりとわかるようなそんな感覚。散りばめられた、映画のシーンか、回想か、空想かわからなくなってしまった様な、そんな身体性が漂白されたしまった世界。だからこそ、そこで描かれる「性」は、切ない美しさを持っていた。木下氏が過剰な言葉で汚そうとする程に、その美しさの輪郭は増していく気がした。第1期メンバー・大山純氏の少し拙さのある絵が、素晴らしくその音楽の世界観を表していたと思う。そしてこのアルバムに感じたのは、そういう“身体性が漂白された性”とは完全に違うものだった。ここにあるのは、もっと生々しいものだ。

このアルバムに“刺青”という曲が収録されているけど、刺青の模様とそれを持つ女性を描いた作品として思い浮かぶものとして、ナンバーガールの“TATTOOあり”という名曲がある。その曲と“刺青”との違いが、僕の中における“身体性が漂白された性”と“生々しい性”との違いだと言える。個人的には、性を観念的なレベルに一度落とし込んでいるものの方にこそ、そこにある切なさを感じたりするのだけど…。僕が向井秀徳氏の表現を好む一つの要素に、そういった“傍観者”的視点がある。風景との間に幾らかのの距離感を持った視点。それは“戯画化的視点”とも言えるかもしれない。

…でも、そういった「先入観的アートスクール像」をなるべく取り払い、自身とダブらせるような聴き方をやめて聴くと、このアルバムは確実に次の段階へと進化を遂げた非常に素晴らしい作品だと言えると思う。もちろん、寂しくはあるけど…。
海外レコーディング+トニードゥーガン・プロデュースの功績か、音像の広がり、アレンジの広がりがこれまでの作品とは一線を画する。丁度、プロデューサーにデイヴ・フリッドマンをを起用したナンバーガールの1stから『DESTRUCTION BABY』への変化に似ていなくもない。
ただ歌詞の世界観に生々しさを感じると同時に、言葉の煌きが薄れたという印象も感じてしまう。生々しさを感じる言葉こそが強い言葉という訳ではないというか…。以前の、引用を多く用いた箱庭の様な歌詞の世界はある種完成されていた気がするけど、それ以降の表現へと向かった印象がある今作では「言葉」という点においては、非常にまだ過渡期と言うか、弱い印象がある。

でも事実、本当に素晴らしい作品である事は間違いない。木下氏のメロディとコード感のセンスに疑う余地はない。
因みに個人的にお気に入りは、“Forget the swan”(遠い記憶の冬の空に響く様なサビのコーラスが泣ける程に素晴らしい)。“クロエ”、“PERFECT KISS”(個人的にファンキーな16ビート系の曲には反応してしまうので…)。さっきは悪い様な書き方をしてしまったけど“刺青”も良い。“BLACK SUNSHINE”も…って、ホント捨て曲なし。あと“Waltz”は個人的にはデイヴ・フリッドマンのmixの方が好きだな、粗暴だけど品のある空間的なドラムの音が…。とは言え、作品の軸がブレる感じもあるから、ボーナスディスクでも収録しない方が良かったのでは…。とか言って、ボーナスディスク嬉しいけどさ。
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